白根光夫「霧深き」20号P・1982
Deep fog
花の季節は、朝となく夕となく、霧がよく湧き、その霧の中に現れ、消える花々は夢幻のごとくで、たちまちふしぎ空間を現出して見せる。
朝の取材に、細い山道が一面に花びらでおおわれているのを見れば、前夜の風の吹きざまを思い、闇の中を花びらたちが一斉に物怪(もののけ)のように飛ぶ構図が浮かぶ。
白根光夫エッセイより部分